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2013年2月11日 (月)

映画「ソハの地下水道」

またまた、ブログ更新が滞り、ますます追いつけなくなってきました。でも頑張ります。まだ1月上旬に観た映画のことです

 アグニェシュカ・ホランド監督の「ソハの地下水道」。実話を基にした映画です。昨年のアカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされ、ポーランド政府観光局の日本語ブログにも記事があります(2012年1月3日の記事)
 舞台は1943年、ナチス占領下のポーランド・ルヴフ(現在はウクライナ領)。主人公ソハ(ロベルト・ヴィェンツキェヴィチ)は下水道の管理人(修理人、と公式ページにはあるけど、常に管理のため下水道を見回っている人に思えるので)ですが、乏しい収入を補うため後輩の作業員(名前、忘れちゃった)とともに、下水道を利用したコソ泥(空き巣)も働いています。戦利品の一時的な隠し場所も下水道の中にありました。下水道と言っても、ヨーロッパのそれはかなり広いのが普通なのか、「レ・ミゼラブル」や『アンジェリク』などでおなじみのパリの下水道ほどではないかもしれないけど、ルヴフの下水道も広く、人が立って悠々と歩ける部分も長い。決して善人とは言えないソハでしたが、家族のことは大事にしているようでした。

 ある日、ソハたちが下水道を点検している最中、天井部分が開いて、人が下りてきます。そこはユダヤ人ゲットーの真下。ユダヤ人たちが隠れ家を求めて居住区の地下を掘っていたのです。驚いたソハですが、ユダヤ人をナチスに売るよりも、下水道の中に匿って謝礼をもらった方が得策だと腹を括ります。ユダヤ人たちのリーダーはヒガー(集英社文庫版の本や公式ページではヒゲルと表記。映画字幕はヒガー、音声を日本語表記するとヒガーの方が近いかな?演じているのはヘルバート・クナウプ)。映画での印象は知識人という感じ。
 やがてゲットーでは強制連行が始まり、ヒガーたちは地下水道へ逃げます。ソハと後輩作業員は彼らを安全な場所に案内しますが、地下へ逃げ込んだ人数はソハはもちろんヒガーたちにとっても予想外の大人数になりました。人数が多すぎて匿いきれないと判断したソハはヒガー一家を含め数名だけをさらに安全な場所へと連れていきます・・・。
 ソハはユダヤ人たちを養うために大量の食べ物を確保しなければなりませんし、一度ならず軍隊から疑われます。ユダヤ人を匿うことを金儲けの手段としたソハでしたが、それはわが身だけでなく友人や家族を危険にさらすことでもありました。後輩作業員は途中でやめ、妻にもばれて反対されます。
 ユダヤ人たちにもさまざまな出来事があります。地下の隠れ家に耐えきれないと逃げ出す妹、その妹を心配する姉。その恋人は彼女のために危険を冒して地上に出て強制収容所の労働者と一時交代して妹を探します。地下生活の中で生きる希望を失うものもいました。・・・
 やがてヒガーたちの持ち金が尽き、ソハへの謝礼はおろか生活必需品を買うための資金を渡すこともできなくなりますが・・・。

 地下生活を描くシーンが長く、観ている自分自身も息が詰まるような苦しい思いがしました。特に地下生活が始まったばかりの時。そして大雨で地下水道が洪水になるときの恐怖感、ハラハラして見守ってしまいました。14ヵ月もユダヤ人たちを匿いぬいたソハは、決して英雄的精神をはじめから持っていたわけではなく、どちらかというと小悪党の部類でした。でもすばらしい人間性を発揮して、10人もの人間を救ったのです。最後、ナチスの敗北によりユダヤ人たちが地下から救い出されたときは感動的なシーンです。ソハの妻もユダヤ人たちに食べ物を振舞います。

 映画の終わりにテロップが流れます。ソハは1046年に、愛娘を暴走するソ連軍のトラックから守ろうとして轢死したこと。葬儀の時誰かが「ユダヤ人何かを助けるから神罰が下った」と言ったこと。…「人は神の名を借りてまで人を罰したがる」という趣旨のテロップで締めくくられます。すごく含蓄のある締めくくり。いったい「神」とはなになのか?考えずにはおれません。戦争にも迫害にも、そして個人への誹謗へも利用される「神」とは?神話物語は好きなんだけどね。

 映画も本もおすすめです。昨年観た「アンネの追憶」もそうですが、高校などでの団体鑑賞等ででも、こういう事実を知る機会の少ない若い人たちにぜひ見てほしい映画です。

 

 

(DVD)

(集英社文庫、原作。・・・ヒガー=ヒゲルの覚え書きと著者の取材・インタビューを基にした小説)

マンホールから顔を出している子どもたち、ヒガーの子どもたちですが、とてもかわいいです。映画を観る前はこの女の子の名前が「ソハ」なのかな?と勝手に思っていました。ポスター画像を見て想像したストーリーと全く違いました。映画の中では女の子のクリシャが大きく描かれていて、病気になった時にはソハが献身的に看病していました。ソハ自身も女の子と父だったからかもしれませんね。

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