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2013年1月 6日 (日)

映画「レ・ミゼラブル」

昨年末、映画の「レ・ミゼラブル」を観てきました。原作も好きだし(完訳版を読んだのは20年以上前だけれど)、舞台も好き(生で観たのは1度だけですが・・・、25数年記念コンサートの映像は何度も観てるんだけど・・・。CDも何度も聞いてるんだけど・・・、関西公演がしばらくなかったですよね)なので、ずっと楽しみにしていました。

↑ムック本(日経エンタテインメント!  ミュージカル映画バイブル (日経BPムック) )も買って予習して、以前一緒に舞台版を観に行った次女の帰省を待って、期待満々で一緒に観に行きました。もちろん期待は裏切られませんでした。すばらしい歌声と迫力ある映像、そしておなじみの感動的な楽曲にストーリー、大感動でした。

 映画バージョンで気になるのはやはり「歌」がどうか、舞台版との楽曲の入れ替え等での違和感がないか…などの心配ですが、この映画ではそういう問題点は一切なかったように思います。主役のヒュー・ジャックマンは、もちろん言わずと知れた映画スターですが、実はミュージカル俳優としてのキャリアも豊富だということを今回初めて知りました。時に力強く、時に温かく、時に切ない歌声ですばらしいジャン・バルジャンでした。ジャベール役のラッセル・クロウもミュージカル出演経験ありで、ロックシンガーとしての一面もあるそうです。ほかの出演者もミュージカル経験豊富な人ばかりのようです。ちなみにファンテーヌ役のアン・ハサウェイのお母さんもファンテーヌ役で舞台に立ったことがあるそうですよ。
 スターのキャスティング優先で歌は吹き替えというような不自然なことは一切ないばかりか、この映画では画期的な撮影方法が取られているそうです。というのは普通、ミュージカル映画では歌の部分は先に録音しておいて、後から実際に演じるときは歌の部分は口パクなのだそうですが、この映画は実際に歌いながら撮影していったんだそうです。映画の公式ページなどで歌うシーンを撮影している動画が公開されています。俳優はイヤホンでピアノの音を聞きながら演技に合わせて会話するように歌っています。ささやくときはささやくように、後悔するときは後悔するように・・・。ほぼ全編歌で構成されているから従来のような形式で撮影されたら違和感があったかもしれませんね。そのせいで舞台版とは歌い方がずいぶん違うのではないかと思います。たとえばジャン・バルジャンが自分と間違われた男を救うために自首すべきか否か迷うところでも「Who am I? Who amI?」ときて「I'm Jean Valjean」の歌い方、映画ではつぶやくような歌い方になっています。映画のための新曲「Suddenly」は、ジャン・バルジャンがリトル・コゼットを保護して逃走する馬車の中で歌うのですが、これも名曲です。私はこの曲(だけでもないけど)をもう一度聞きたいがためにサントラを買いました。

 表現の限られる舞台と違って映画では、映像の力も大きく影響しますよね。冒頭のツーロンの徒刑場での重労働シーン、舞台版では重い荷物を担いでいたような記憶がありますが(記憶違いだったらごめんなさい)、映画では荒ぶる波の中で、腰まで海に使って、座礁した船を引き揚げる大迫力の苛酷な作業でした。ジャン・バルジャンがジャベールに、踏みしだかれてしまった大マストの三色旗を取って来いと命ぜられる場面で、ジャン・バルジャンの怪力があらわされています。またこの踏みしだかれた三色旗により、自由・平等・博愛のフランス革命の理想が地に落ち、庶民たちが飢えと貧困に苦しんでいる実態が象徴されているようにも思えました。
 ファンテーヌの髪は本当に切られています。アン・ハサウェイは可憐な娘のような工員姿から心身ともに傷つきやせ細って歌う「夢破れて I Dreamed a Dream」、そしてファンテーヌの死までまさに「体当たり」といった感じの演技。工場のシーンから死の直前のシーンまで切なくなる辛い境遇が暗い波止場近くの猥雑な光景であらわされています。幼いコゼットはあの有名な挿絵に本当によく似ています。「Castle on a Cloud」は可愛くも美しい声。テナルディエ夫妻の「The Innkeeper's Song」は、夫妻の強欲ぶり、酷薄さをよく表した映像がついています。ネズミの肉やらなにやらわけのわからないものが入ったあやしいソーセージが作られていく過程も。サシャ・バロン・コーエンとヘレナ・ボナム=カーターと芸達者ぶりが見事。そのあまりの悪辣さには笑っていいのやら、どうなのやら・・・。しかしヘレナ・ボナム=カーターとあのソーセージ(ひき肉器)を見ると、どうしても、「スウィーニー・トッド」を思い出してしまいますね。バスティーユ広場にはちゃんとガブローシュの住まう象もあります。決起した学生たちがバリケードを作るシーンは窓窓から家財道具等が投げられて圧巻です。学生たちと軍隊の衝突するシーンは・・・当然のことかもしれませんがやはり流血の惨事がはっきり見えてしまって残酷です。

 とにかく、オススメの映画です。舞台版がお好きな人はもちろん、初めてこの物語に触れる人にも是非観てほしい。ただし、ミュージカル版を知らない方は、全編歌であることを承知の上で、つまり、歌の部分が冗長だなどという文句は封印して楽曲も物語も楽しんで、感動してほしいです。

で、感動した方はさらに、原作をぜひ読んでください。新訳も抄訳も出ています。完訳バージョンは著者ユゴーの本編の筋にはあまり関係のないナポレオン礼賛部分などはちょっと読むのが面倒かもしれません。その辺は適当に飛ばし読みしても大丈夫です。原作はすでに読了した、という方には「レ・ミゼラブル」百六景〈新装版〉 (文春文庫)がおすすめです。

歌が気に入った!と思われる向きには、こちらのコンサートバージョンのブルーレイももおすすめです。エポニーヌは今回の映画版と同じくサマンサ・バークスが演じています。若いけどすばらしい歌唱力ですよね。

 

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