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2012年9月 9日 (日)

「トガニ」

 2週間ほど前に仕事仲間10名ほど(not同僚)と女子会をやったんですが、夏の間どんな映画を観たか・・・と言う話題になって「スパイダーマン」「アベンジャーズ」「ダークナイトライジング」「トータル・リコール」「プロメテウス」・・・と並べたら「ようそんなにしょーもないのばっかし観に行ったなぁ」とあきれられてしまいました。そう、この仲間内は文芸映画の方が好きだからねぇ・・・。たとえば「ジョルダーニ家の人々」を一日で全部観ちゃえる人たちだから・・・でも私はもともとSF小説は好きなわけだし、映画を観て重苦しい気分になるより、何も考えずにパ-っと発散できる楽しいハリウッド映画が好きなんだよ・・・

 でもやはり、まじめなテーマの映画の方が心に残るのはたしか。そんな風に後まで心に残るからこそ何本もはよう観ないなぁ、とも思います。この8月に(もう半月以上前だ)観た映画の中では韓国映画の「トガニ」がそういうタイプの映画ですね。「韓国の学校で起こった児童虐待に関する映画」という知識だけで観に行ったのですが。本当に衝撃的な映画でした。もう怖くて怖くて・・・。

 主役の先生を演じるコン・ユさんは韓流でとても人気のある俳優さんだそうですが、それも映画鑑賞後にネット情報で知って、どおりでいつもよりおばちゃん層が多かった気がすると思ったぐらいです。

 すご~く心残りなのは、この映画もエンドクレジットが出た後まで席を立たない方が良い映画だったこと。私は映画を観に行ったときは9割がたエンドロールも観て場内が明るくなってからでないと席を立たないのですが、映画の内容にあまりにも心が動転してしまって、ふらふらと外へさまよい出てしまいました。あとから別の日に行った友人に聞くと(上記の仕事仲間の一人ですが)、読んだらホッとするような字幕が流れていたとか・・・。つくづく残念です。まぁ、その内容については家に帰ってからネットで調べて、大体のところは分かったのですが。

story・・・ネタバレもあります

 コン・ユふんするカン・イノが、大学の教授の紹介で新任美術教師として霧津(ムジン)と言う郊外の街の聴覚障害児の学校に車で向かっているシーンから映画は始まります。見通しのきかない霧の中を走る車はこの先の映画のストーリーを象徴するようです。カン・イノの車が走るシーンと、男の子が線路に佇むシーンが交互に出てきます。線路には列車が迫ってきています。男の子は逃げようとしません。カン・イノは車を走らせます。男の子は列車にはねられ、同じ瞬間カン・イノは鹿をはねて、車の修理屋へ。

 車の修理屋では霧津人権センターの幹事、ソ・ユジン(チョン・ユミ)に追突され、言いがかりをつけられます。ここはちょっとソ・ユジンの描き方に不満があります。彼女の覇気を表したかったのかもしれませんが、酒気帯びで言いがかりをつける彼女が実は信頼のおける人間だというのは、いかがなもんでしょうか。

 さてカン・イノが赴任した学校には何か異様な雰囲気が漂っています。愛想は良いが、なにか一筋縄ではいかないような校長、教職提供の代償として多額の寄付金を要求する行政室長(校長と双子の兄弟。行政室長とは日本でいえば事務長かな?副校長はいないみたい)。子どもたちの表情も一様に暗い。なにかおどおどしている。カン・イノが帰ろうとすると女子トイレから叫び声が聞こえるので、声をかけ、中を検めようとしますが、警備員に止められます。後にカン・イノはその時中を検めなかったことを後悔することになります。

 リンゴの写生の授業をするカン・イノ。ヨンドゥ(女子)はとても上手。ユリ(女子)は写生用のリンゴを食べ始め(ユリは知的な遅れとの重複障害児)、ミンス(男子)は傷だらけになって遅刻して来ました。ミンスに遅刻の訳を聞いてもかたくなな表情をするだけです。ミンスはパク教諭から激しく執拗な暴力を受けていました。職員室でその暴行は繰り広げられていましたが、注意する教員は誰もいません。

 ある日カン・イノは寮の窓に腰掛けるユリを見かけ、危ないと注意するために寮へ入ります。ユリはなぜか怯えており、カン・イノがユリに導かれて入った洗濯室には、裁ちばさみと髪の毛が散乱、寄宿舎の責任者で校長の一族のユン・ジャエがヨンドゥの頭を洗濯機の中へ入れて押さえつけていました。憤然と制止したカン・イノに、ユン・ジャエは寄宿舎のことは自分の責任下だとうそぶきます。カン・イノはヨンドゥを病院に連れて行き、学校で虐待が行われているとソ・ユジンに連絡をします。ソ・ユジンが筆談でヨンドゥから聞き出したことはさらにおぞましい、繰り返し行われている性的暴行の事実でした。

 ユリ・ヨンドゥ・ミンス・・・家族が障害を持っていたり、孤児だったりで立場の弱い3人は校長・行政室長・パク教諭などから性的虐待を繰り返し受けていたのです。列車にはねられた(おそらく自殺)ミンスの弟も、パク教諭から性的虐待を受けていました。ユリは9歳と言う幼いころから繰り返し暴行されています。

 警察も行政も教育委員会も校長からの賄賂や、校長の社会的地位(カトリック教会の長老等)への慮りなどから、人権センターのソ・ユジンらの訴えを門前払い。それならマスコミへ訴えようと子どもたちの証言ビデオを作ります。ビデオは世論を動かし、やっと校長・行政室長・パク教諭の3人を起訴することができますが・・・。

 子どもたちの証言内容が映像として流れるのですが、ここまでのシーンを撮っちゃうのか、子役の人たちトラウマにならないのかなぁ??と心配になるほど真に迫っていました。

 裁判の様子は一種の法廷劇のようにも描かれていました。財力と権力にものを言わせる被告側。カン・イノの大学教授まで連れてきて懐柔しようとします。お金に釣られて和解金を受け取ってしまう子どもたちの親や祖母も悲しい。祖母が和解に同意したことで、法廷での証言の機会を奪われ「僕が許していないのに」というミンスの悲痛な叫び。

 判事から弁護士になったばかりの者は勝たせるという前官優遇という慣例に苦しめられ、決定的証拠を手に入れたのに、検事によって握りつぶされてしまうカン・イノたち・・・。

 そして結末は・・・。

トガニ: 幼き瞳の告発 原作小説です

 この映画は実話をもとにした小説を、コン・ユさんが徴兵期間中に読んで感銘を受け、映画化を実現されたものだそうです。そして映画が公開されるや韓国で社会現象となり、事件の再調査を行えという運動が湧きおこり広がったそうです。性的暴行の加害者を厳罰に処する通称「トガニ法」なるものが2011年10月成立したそうです(男児に対する暴行が入っていないのがちょっと残念)。また、モデルとなった学校は光州にあったそうですが、廃校になったそうです。原作者・孔枝泳(コン・ジヨン)さんのインタビュー記事によれば、現実はもっと酷かったのだそうです。

 子役の3人の演技はとてもすばらしく、また、コン・ユさん、チョン・ユミさんもとても良かったと思います。観るのに苦しい映画でしたが、やはり観て、また知ることができてよかったと思います。

 それから、本筋には全く関係ありませんが、手話で日本語手話と同じ動作のものがいくつか(拍手とか)あって、ちょっと興味深かったです。

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