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2012年6月25日 (月)

「第九軍団のワシ」

23日に観た映画の2本目は「第九軍団のワシ」

これはね~、かなり推したい映画です。戦闘シーン(私の嗜好としてはちょっと怖くて目を背けたい部分はあったけれども)などに迫力があって、文芸映画として単館系の劇場で短期間しか公開しないのがもったいないぐらい、ハリウッド的娯楽作品愛好者にもウケる映画だと思いました。

 舞台は西暦140年のブリタニア。(「テルマエ・ロマエ」の時代の少しあとですね。ことの発端はハドリアヌス帝の時代ですし。ブリタニアはブリテン島の南部で、のちのイングランドとウェールズの地域です) 南西部の小さな砦にマーカス・アクイラ(チャニング・テイタム)という新任の若い隊長が赴任して来たところから物語は始まります。マーカスの父・フラビウスはかつてブリテン島の北部(カレドニア…スコットランド)に、黄金のワシを掲げて5000人の軍団(ローマ軍最強と謳われた第九軍団)を率いて侵攻しましたが、フラビウスと軍団はそのまま忽然と消えてしまい、ローマ帝国の象徴である黄金のワシも失われたままでした。この敗戦のあと、ローマ軍は北部の民族の侵入に備えて、ブリタニアとカレドニアの間に「ハドリアヌスの長城」と呼ばれる城壁を築きました。

 マーカスは、父の軍団と黄金のワシの彫像がどこに消えたのかをつきとめ、敗軍の将として行方不明になっている父を探し、またその汚名をそそぐため志願してブリタニアに来たのでした。あらたな部下たちはマーカスの父のことを知っていて、侮るような噂話をしていました。ある夜半、マーカスは不穏な物音を聞いて部下たちを起こし、夜討ちに備えさせます。夜明けが近づき、部下たちがマーカスの勘違いだと決めつけそうになった頃、ブリタニアの先住民(ケルト民族?)たちが砦を急襲。防御態勢ができていたおかげで、夜討ちは何とか防いだものの、砦の外では先住民がローマ軍の偵察隊を捕虜にして惨殺しようとしていました・・・。マーカスは自分の精鋭軍を率いて、捕虜奪還に繰り出します。何とか戦いには勝つことができましたがマーカスは重傷を負い、砦を遠く離れた叔父の家で静養することになってしまいます。
 マーカスは叔父とともに行った競技場で図らずも一人の奴隷の命を救います。彼はマーカスの叔父に買われアクイラ家の奴隷となります。ローマを憎む先住民だけれども、生命の恩義でマーカスに忠誠を誓うエスカを演じるのは、「リトル・ダンサー」の主人公だったジェイミー・ベル。感情をあまりあらわさないエスカの表情はとても印象的です。
 叔父を訪ねてきたローマ軍の将校から、第九軍団のワシの彫像がブリテン島の北の果てに祀られていると聞いたマーカスは、エスカと一緒にワシの行方と父の消息を求めて、ハドリアヌスの長城の先へ、ローマの支配の及ばぬ土地へと旅に出ることになります。

 ・・・この調子だと、ネタバレするまで書いてしまいそうなので、ストーリーの紹介はここまでにしておいて・・・

 このふたり旅、往路・帰路、ワシの在り処などなどドキドキハラハラの連続です。ちょっと先住民の描き方が酷いんじゃないか?と思わないでもありませんが、見応えたっぷりです。エスカの表情がいつもミステリアスで、主人公より印象に残って、すごく目に焼き付いています。

 やっぱりネタバレを書いてしまいますが、ローマに反感を持っているエスカが、北方に行ってもマーカスに力を貸してくれるかどうか、マーカスの叔父らは大いに疑いを持っていて、むしろそれをいい潮にエスカが先住民と結んでマーカスを殺して自由の身になるのでは?、と心配というより確信してマーカスを引き止めるのですね。それを押し切って、マーカスたちは出発します。旅をしようという話が出る前段で、マーカスとエスカがともにイノシシ狩りをしているシーンがあり、主従を越えた友情をはぐくんでいることを象徴したシーンだろうとは思うのですが、二人の結びつきが強固であるという確信が得られるほどの場面はありません。だからこそ北方に行ってからのエスカの行動のミステリアスさが高まってよいとは思うものの、エスカがなぜ、同胞ともいえる先住民側につくと見せかけて、その実マーカスのために働いたのか、という疑問は残ります。そこは物足りない気がしなくもないです・・・。

 それから、こう書いてしまえば身もふたもないのですが、なぜ「黄金のワシ」や「名誉」(家名?)のためにこれだけたくさんの人の命をかけなければならなかったのか・・・、勝者が属するのが巨大なローマ帝国(ブリテン側から見れば侵略者)なだけに、ちょっとモヤっとしないでもありません。そこも含めて名作映画といえるのか、とも思いますが・・・。先住民が蛮族のように描かれているのは、ローマ側の目から見ていると考えればよいのでしょうか?勇猛なアザラシ族の若者が、川での戦いで死んで全身に塗った塗料が流された後、穏やかな死顔が水の中に見えたとき、ローマ人は何を思ったのでしょうか・・・。

 私は基本的に侵略者は応援したくないんですが、この映画ではどうしてもマーカスの側に肩入れしたくなって、ちょっと自己矛盾はありました。ローマ人とブリテン人との関係をどうとらえたらいいのか・・・でもこれは歴史観の問題じゃなくて娯楽作品だ、と思って楽しむことにしました。 

 原作はイギリスの歴史小説家ローズマリー・サトクリフの「歴史ミステリー」ということですが、YA本とみえて岩波少年文庫に入っています。実は、私この本が少年文庫で出たときにすごく読みたくて買ったんですけど、積読になったままです。これを機会に読んでみなくちゃ!

この物語はフィクションのようですが、ローマの第九軍団5000名という大軍が忽然と消息を絶ったのは歴史的事実なのだそうです。いろんな説があるのを、歴史ミステリとして創作されたのがこの本のようですね。続編(マーカスの子孫が主人公)もあるようです。

 あとひとつ。京都シネマには「第九軍団のワシ」のパンフレットが置いてありませんでした。すごく残念!公式サイトにはパンフレット発行という記事があるので、作成されなかったわけではなさそうですが、東京でのみの販売だったんでしょうか??それとも京都シネマに上映が回ってきたころには品切れになっていた?
 公式サイトの宣伝によればとても充実した内容のようなので、ぜひ読みたいんだけど・・・どこかで手に入らないのかなぁ?

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コメント

とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。

投稿: 職務経歴書の書き方 | 2012年7月 3日 (火) 12時19分

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