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2008年2月 6日 (水)

『ホルモー六景』ほか万城目学の本

  万城目学さん、進境著しい新進作家ですね。まだ3冊しか出版しておられませんが3冊ともものすご~くおもしろいですよね。昨日やっと3冊目の『ホルモー六景 』を読んで感想を書こうとして、半年以上前に読んだ他の2冊の感想を書いていなかったことを思い出しました。時系列にしたがってここで書いておこうと思います。ただ、もう大分記憶が薄れているので多少の思い違いはご勘弁を。

①『鴨川ホルモー』
 ホルモーっていったい何なのか。表紙のイラストはどう見ても現代の四条通(大和大路辺りから八坂神社を見た風景でしょうか?)なのに、着流し男女の中にチョンマゲ(茶筅髷)の人がいるのはなぜ?・・・北上次郎氏が本の雑誌で強力プッシュしていたので読んでみようと思いつつも、若干の不安を持っていました。

鴨川ホルモー Book 鴨川ホルモー

著者:万城目 学
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 主人公は安倍という京都大学に入ったばかりの男子学生。葵祭のエキストラのアルバイトの帰り「京大青竜会」という、わけのわからないサークルの新歓コンパに誘われて参加。その場で会った同じ新入生の早良京子に一目ぼれして、同回生・高村とともにサークル例会にも参加します。いったい何をするのかわからないようなサークルでしたが、先輩たちの説明を半信半疑で聞いているうちに、実際に驚くべき光景を目にするときが来ました。ホルモーとは小鬼を使役して京都大学青竜会・立命館大学白虎隊・京都産業大学玄武組・龍谷大学フェニックス(朱雀団)という四神にちなんだ名を持つ4つのサークルが覇を競う、いにしえから続くたたかいのことだったのです。・・・。恋のもつれあり、鬼語修行やホルモー戦の様子、その戦略などなど奇想天外な出来事と日常の学生さんの青春が相俟って、とてもおもしろい小説になっています。・・・「第4回ボイルドエッグズ新人賞」受賞作とのことですが、私はこの『鴨川ホルモー』ではじめて「ボイルドエッグズ新人賞」なる文学賞が存在するのを知りました。「ボイルドエッグズ新人賞」とはそのHPに「日本初の作家エージェント・ボイルドエッグズは、出版社(株)産業編集センター出版部の後援のもと、才能ある新人のための新しい文学賞『ボイルドエッグズ新人賞』を創設し、・・・」とありますが、なかなか選考が厳しいようで過去7回実施されたうち受賞作が出たのは3回だけ。道理で知らないはずです。・・・
 4つの大学サークルのオニたちはそれぞれ近くの神社に棲みついているようです。京大の青いオニは吉田神社に、産大の黒いオニは上賀茂神社に、立命の白いオニは北野天満宮に、龍谷の赤いオニは伏見稲荷大社にゆかりのオニだとか。だがしかし、京都人としてはしょうもないツッコミを入れたくなります。立命(衣笠)に一番近い式内神社は平野神社だし、龍谷だったら藤森神社。いやまて、古くから伝わる行事というなら立命は荒神口で、龍谷は大宮の学舎やろ。産大なんて創立から40年あまりしかたっていないねんけど?・・・なんてギモンがわいてきませんか?
 ま、そんなことは抜きで楽しむべきなんでしょうね。登場人物の名づけも凝っているというか、ゆかりのある名前になっています。主人公・安倍(安倍晴明からでしょうね)のライバルが芦屋満(蘆屋道満から)、先輩が菅原真(菅原道真から)、友人が高村(小野篁から)、憧れの彼女の名は早良親王から・・・というのはわかりやすいですが、楠木ふみは、実際に彼女がホルモー戦の指揮を執るまで名前の由来に気づきませんでした。名軍師・楠木正成からでしょうね。なんで「ふみ」なのかはわかりませんが・・・。
 京都市が舞台で、不思議な生きものが出てくる、大学生を主人公とした小説、青春ファンタジーといっても良いかも・・・という点で、同じ京大卒の若手作家・森見登美彦氏の作品と似通っているように感じました(特に「ぺらぺらパンツを吉田の空へと旅立たせた」あたりとか)。
 読み終わったあとでもホルモーを定義するのは難しい。あの雄たけびは何ゆえ「ホルモー」なのでしょうか・・・? インタビュー記事など読むと、作者の思いつきであって、由来はないようですが・・・。

鴨川ホルモー 鴨川ホルモー

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②『鹿男あをによし』
 昨年夏の直木賞候補になりました。最近これを原作にしたTVドラマ(人物設定がドラマ向きに変えてありますが、それもまたよしです。私はこのドラマをぜひ観たいと思っているのに、木曜は会議続きで、今までに50分相当しか観ることができていません。玉木宏さん、とっても2枚目なのにエキセントリックな役が良くお似合いです。下宿先の住人、美術教師の佐々木蔵之介さんはとてもよい人・良い教師に思える原作のイメージにピッタリ。頑固な生徒・堀田イト役の多部未華子さんもイメージどおりの表情をしてくれます。目つきがいいですね。あぁ、だけど、明日も多分帰宅が遅くて観れない。涙。)も始まって大ブレイクしてしまいましたね。夏目漱石の『坊ちゃん』をかなり意識した青春小説です。とってもおもしろいです。帯にある「どこまで面白ければ気が済むんだ!?やっぱりマキメは並みの天才じゃない。」という金原瑞人氏のことばに大きくうなずいてしまいます。傑作です。おすすめです。

鹿男あをによし Book 鹿男あをによし

著者:万城目 学
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 研究室での人間関係悪化のためか神経衰弱のレッテルを貼られ、大学院を休んだらどうだと勧める教授の紹介で、主人公の「おれ」は、奈良にある私立女子高に2学期の間だけ常勤講師として赴任することになりました。ドラマではちゃんと名前がついていますが、小説中では『坊ちゃん』と同じく氏名不詳で、「おれ」の1人称で物語が進みます。こんなとき教師は便利。「○○さん」と呼ばなくても「先生」で用が足せますね。
 「おれ」の授業第一日目に遅刻してきた生徒・堀田イトは、大遅刻の言い訳にマイカーならぬマイシカ(my鹿)に駐禁を取られたからと言い、奈良では誰でも鹿に乗っていると言い放ちます。以降「おれ」と堀田の関係は最悪に・・・。黒板に「パンツ3枚千円也」、「鹿せんべい、そんなにうまいか」と書くいやがらせ、教頭が伊達男(あだなはリチャ-ド・ギアにちなんで”リチャード”)なこと、姉妹校の美人教師・“マドンナ”等、坊ちゃんにインスパイアされていることは間違いありません。生徒とうまくいかなくて落ち込む「おれ」に、年配の英語教師が張子のだるまをくれるのですが、そこに「stray sheep」と書いてあると言うのも漱石臭い気がします。でも漱石の世界とは決定的に違うのはファンタジー要素。
 ある日「おれ」は鹿に話しかけられます。「さあ、神無月だ―出番だよ、先生」。この世界を天変地異から守るため、宝物、サンカクというしろものを手に入れなければならないという使命を鹿から聞かされても、鹿がしゃべるなんて気のせいだ・神経衰弱だ・・・と思って行動しなかった「おれ」は、鹿に失敗の「しるし」を付けられてしまいます。その「しるし」とは顔が鹿になってしまうこと。さァ大変とばかり「おれ」は・・・。
 青春・学園・ファンタジック・コメディ小説、です。最後は堀田イトの手紙で締めくくられるのですが、堀田さん、このあとどんな高校生活を送るのかな。「おれ」は地元にもどってどうするんだろ・・・。いつも東からやってくる勾玉を持った運び役、「おれ」以外の運び役の物語も読みたいし、続編やスピンオフを書いてくれないかなぁ。『ホルモー六景』みたいな。万城目さんは神社が好きなのかな。この作品では春日大社と伏見稲荷と鹿島大明神が大事な役割を果たしています。
 それにしても、奈良に赴任する前の「おれ」は箱根より西には行ったことがないと言っていましたが・・・・『坊ちゃん』の時代ならともかく、いまやそんな関東生まれの28歳はありえないでしょう。修学旅行などで京都・大阪・沖縄・九州・広島のうちどこかはいっているはずだと思うけどな。

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④『ホルモー六景』
 『鴨川ホルモー 』の続編&スピンオフ短編集。デビュー作よりさらに面白くなりました。本編・『鴨川ホルモー』を読まなくてもじゅうぶん面白いと思いますし、『鴨川ホルモー』が微妙だった人も『ホルモー六景』を読んだら読み返したくなるかも・・・。青春と恋愛が程よいコミカルさで描かれています。

ホルモー六景 Book ホルモー六景

著者:万城目 学
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 ・プロローグ 3回生となった安倍と高村の学食での会話。高村はそのチョンマゲ(茶筅髷)を切り落としており、その理由は第六景でわかるしかけです。
 ・第一景「鴨川(小)ホルモー」 京都産業大学玄武組の強い女性コンビ・二人静と呼ばれる彰子と定子(しょうし、ていしではなくて しょうこ、さだこ。一人の男・一条を取り合う話ではありません)、ともに彼氏のいない2人の「車懸かりの陣」は玄武組の強さの秘訣といわれていましたが・・・。
 ・第二景「ローマ風の休日」 イタリアンレストランでバイトする高校生男子と楠木ふみの話。接客業に向かなさそうな楠木ふみは「仕分け」においてその才能を発揮します。ホルモーで軍師の才能を発揮した時みたいですね。彼女に淡い憧れを抱いた高校生の一人称で描かれます。鴨川にかかる橋を一筆書きで渡れるか・・・のパズルは本気で考えてしまいました。簡単に証明し、QEDと書く楠木ふみは、さすが京大生!
 ・第三景「もっちゃん」 読んでる途中でもっちゃんとは誰かに気づきます。私はこの話が6編中で一番好きです。20世紀初頭にホルモーをやっていた学生たちを描きます。ムムッ!するとそのころの玄武組はどこの学生さんがやってたんだ?その銀時計は今も安倍の手元に・・・。なんで私がこの話が好きかというと、学生時代、もっちゃんの小説を愛読してたから。それと少女時代さだまさしさんが大好きだったから。この歌ももちろん歌えます。そういえば安倍君はさだまさしの大ファンでしたね
 ・第四景「同志社大学黄竜陣」 同志社大学に入学した巴は、教授の書庫から古い書き物を見つけますが・・・。 そりゃぁ、立命が出て同志社が出ていないでは関係者は許せないよね。是非続編で黄竜陣を復活させてあげてほしいです。ジョーの物語も書いてほしいな。

 ・第五景「丸の内サミット」 龍谷大学朱雀団出身の井伊直子は東京に就職、同僚に誘われて合コンにいってみれば、相手側には産大玄武組の代表だった榊原康・・・。2人が旧交を温めながら夜の街を歩いている時、空に黒い怪しい影が・・・。
 ・第六景「長持の恋」 立命館大学白虎隊の珠美はアルバイト先の料亭で不思議な長持に出会います。時をかける恋、です。ベタ甘なお話ですが、私はこれが2番目に好きだったりします。

ホルモー六景 ホルモー六景

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