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2008年2月 3日 (日)

映画「スウィーニー・トッド」その1

 ジョニー・デップとヘレン・ボナム=カーター共演でミュージカル、とくれば観にいかずにはおれませんね。R15ということで残念がっている下の娘が部活の隙に観にいってまいりました。観たのは先週の土曜日です。偶然にも上の娘が友人と同じ映画を見る約束をしていたのですが、違うシネ・コンでの鑑賞でした。このあたり、あちこち選択できるのは田舎とはいえベッドタウンのありがたさです。

「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」 ティム・バートン監督です。

『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』ジョニー・デップ来日記者会見
配給ワーナー・ブラザーズ映画
提供:@niftyコンテンツ
 その前の週に観にいった人たちからは「面白いけどグロい」と聞いていたのですが(もちろん主題から考えて、グロくないわけはありません)、まぁ、本当にスプラッタでした。ホラーが苦手な私はオープニングのパイプオルガンの音の中でモノクロ画面から赤い色がにじみ出てくるところからゾクゾク。ゴシック・ロマン風の映像ですが幽霊やお化けより人間が怖い、本当に生きている人間が怖いストーリーです。気になるジョニーの歌声ですが・・・、ステキでした。舞台ではどんな風に響くのかわかりませんが、映画版では朗々とした歌い方ではなくつぶやくような、ささやくような歌い方が映画の雰囲気にあっていました。他の俳優さんたちもみんなすばらしい歌い手でした。英語も聞き取りやすく、ちょっと堪能な人なら字幕なしでも十分聞き取れる感じがします。ところでヘレン・ボナム=カーターの、たとえば「wait」がカタカナで表すと「ウェイト」よりは「ワイツ」と聞こえるのはロンドン訛なのでしょうか?

 主人公であるスウィーニー・トッド(ジョニー・デップ)とミセス・ラベット(ヘレン・ボナム=カーター)は終始血の気のない顔(白塗りに近い)に、目の周りの大きな隈。不気味さを際立たせ、禍々しさを表現していますね。  

以下、ネタバレ大ありです。

 最初のシーンは、ジョニー・デップ扮するスウィーニー・トッド(本名はベンジャミン・バーガー)とジェイミー・キャンベル・バウアーの演じる若い船乗りのアンソニーのデュエット、「No Place Like London 」 。ロンドン上陸への希望を明るく歌い上げるアンソニーに対して、ロンドンで起こった不幸な想い出を歌い上げるトッド。腕のいい理髪師であったベンジャミン・バーガーは美しい妻・ルーシーとと可愛い赤ちゃん・ジョアナとともに幸せに暮らしていたのですが、ルーシーに横恋慕するターピン判事によって無実の罪で捕らえられたのです。映画を観ただけではよくわからないのですが、パンフレットによれば、オーストラリアに流刑にされ、脱出(脱獄?島抜け?)して漂流したところをアンソニーに助けられたようです。ルーシーを演じているのはローラ・ミシェル・ケリー。彼女は本物のミュージカル俳優だそうです。パンフレットにも公式サイトにもローラ・ミシェル・ケリージェイミー・キャンベル・バウアー、16歳のジョアナ役のジェイン・ワイズナーなどのプロフィールは載っていません。ネットでも見つけにくいし、せっかくパンフレットを編集するなら小さくてもいいから名前のある役のキャスト・プロフィールは載せてほしいものです。あとでちょっと時間を作って映画雑誌をいくつか見てみるつもり。敵役のターピン判事は「ハリー・ポッター」シリーズのスネイプ先生を演じているアラン・リックマン。偏執的な役が続いていますね・・・。ターピン判事と共に悪巧みをし、暴力的だが人前では偽善者ぶりもする町の役人バムフォードにティモシー・スポール。これまた「ハリー・ポッター」の悪役・死喰い人の一人でハツカネズミに化けていたワームテールを演じていますね。トッドの狂気のあまりの凄まじさに、感情移入したり同情するのは難しいのですが、この二人がいかにもな敵役をみごとに演じているので、トッドの復讐心を(フィクションとわかっているからこそですが)受け入れられる気がします。

 次のシーンはロンドン・フリート街の元の家と思しき場所に帰ってきたベンジャミンことトッド(脱獄囚のようなものだから偽名を名乗ったわけですね)。ミセス・ラペットのパイ屋に入りますが、まずいパイ屋にはお客はほとんど来ていません。客と間違えられたトッドの前に見るからに怪しげな、いつ焼いたかわからないまずそうなパイとビールが出てきます。ミセス・ラベットの歌う「The Worst Pies in London 」というナンバーには、肉が高くて買えないからおいしいパイは作れない、はやっているほかの店の周りでねこが消えている~~なんて歌詞があって、ちょっと伏線っぽい。汗をぬぐった手でこねたりゴキブリを麺棒で叩いたり・・・パイ・フィリングはどぶ泥のような色だし、あ~気持ち悪い!実際には当時の庶民の衛生観念はどんなものだったのでしょうか・・・。

 店舗の2階の空き部屋を借りたいとミセス・ラベットに尋ねるトッド。ミセス・ラベッドは2階に案内しながら、ここの住人におこった悲劇を語ります。「Poor Thing」。その気の毒な理髪師の妻は自殺を図ったと・・・・。一人残された幼い娘はターピン判事が引き取ったと。

 その空き部屋には銀のカミソリのセットが隠されていました。狂喜したトッドがかみそりを掲げて歌う「My Friends」。そのかみそりは昔からベンジャミンに好意を抱いていたミセス・ラベットが隠しておいてくれたもの。やっぱりベンジャミンだったと確信して言い寄ろうとするラベット夫人を無視して、カミソリを持って歌い続けるトッド・・・コワイ。

 一方ロンドンを散歩(?)するアンソニーは美しい歌声を耳にします。それはターピンに幽閉同然に育てられているジョアナが籠の鳥の悲しみを歌う「Green Finch and Linnet Bird」。窓を見上げたアンソニーは可愛らしい少女を一目で愛してしまいます。 「Alms!Alms!」と歌う、通りがかりの物乞いの老女に、ここは誰の家なのか、あの子の名前は?と尋ねます。物乞いの老女は、ここはターピン判事の家で、女の子は養女のジョアナ。ジョアナに手を出そうとする若者は手ひどく痛めつけられると忠告します。ジョアナへの恋心を歌うアンソニーの「Johanna」。若々しくて伸びやかでステキです。

  「Johanna」を歌うアンソニーはターピンの屋敷に一見丁重に迎えられますが、ジョアナに言い寄ろうとする男を決して許さないターピンの命令によりバムフォードから散々ステッキで打ち据えられてしまいます。侮辱され、大怪我を負って通りを去っていきながらもアンソニーが口ずさむ「Johanna」。アンソニーは映画では船乗りであるということしかわかりません。19世紀のロンドンの階級社会では、ターピンのような悪者でなくても普通の船乗りが紳士の家の娘に言い寄るのは許さないはず。そのあたり気になります。作詞・作曲のソンドハイム氏はアメリカ人だからあえて階級問題は無視したのでしょうか?アンソニーもイギリス人ではないのかな?アメリカ人という設定なんでしょうか?それとも実はもっと高い階級?アンソニーは舞台版ではもっと登場が多いそうですが、舞台版ストーリーが気になります。

 復讐を誓うトッドとミセス・ラベットは理髪店に仇敵をおびき寄せるために一計を案じます。二人がやってきた市場ではイタリア人の理髪師・ピレリ(サシャ・バロン・コーエン)が大道芸かショーまがいの大人気。助手の少年トビー(エド・サンダースめっちゃいたいけでかわいい。)は屋台というか小屋がけのようなピレリの店の前で「Pirelli's Miracle Elixir」を歌いながら毛はえ薬の宣伝をします。それをインチキだ、小便だと罵ってピレリの対抗心を煽るトッドとミセス・ラベット。ピレリとトッドは髭剃りの腕を競ってその場でコンテストをすることになり、居合わせたバムフォードに審査員をさせます。ピレリが勝利を確信して髭剃りの腕を披露しながら朗々と歌うアリア「Contest」(「いかにもイタリア風だ」とパンフレットに)。しかし見事な腕前で勝ったのはトッドでした。ベンジャミンとは気づかずにトッドの勝利をたたえるバムフォードを、フリート街の店に招待するトッド。心にもないお世辞をバムフォードに使います。負けたのが悔しいピレリはトビーに八つ当たり。激しい暴力です。ちょっと「オリバー・ツイスト」を思い出しました。ディケンズが描いたイギリスと同時代でしょうか。こんな風に虐待される孤児はたくさんいたことでしょうね。施設もひどいところだったでしょうし。

 以下明日に続く

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最近はヒットしそうな映画だとすぐにメイキングブックが作られますね。それよりももっと劇場パンフレットを充実させてほしい気がします。100~200円ぐらい値上げしてもいいから。

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雑誌「ムービー・スター」は2008年1月号から3月号までずっと、ジョニー・デップが表紙、巻頭は「スウィーニー・トッド」です。特に2月号では4ページから25ページまでの長さで特集。3月号では来日インタビュー(1月9日に行われたものを100%だそうです)を特集しています。

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『スウィーニー・トッド』感想 @2008.1.26 理髪師にして殺人鬼(復讐鬼)。 不謹慎ながら「これほど相性の良いものがあるだろうか!」と真っ先に思ってしまいました。手には研磨された鋭い切れ味のカミソリ。客は何もしなくても自分から急所の喉下を晒してくれる。「さあ....... [続きを読む]

受信: 2008年2月 6日 (水) 15時06分

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