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2008年2月15日 (金)

『彩乃ちゃんのお告げ』橋本紡著

 この本、私は橋本紡さんの本の中で一番好きかもしれません。なんだかふっと心が安らぐような小説です。
『彩乃ちゃんのお告げ』橋本紡著 講談社刊

 教祖様が亡くなって、その宗教団体は次期教主様を巡る内紛があるらしいのです。それがどういう教義のどういう宗教なのかは小説には触れていませんし、ストーリーに直接関係もありません。教祖の孫である彩乃ちゃんは小学5年生ですが、どうやら不思議な力を持っているらしく、その力ゆえに次期教主にふさわしいと思っている人も多いのです。でも、小学校5年生という幼い彩乃ちゃんを内紛に巻き込みたくない信者たちは、彩乃ちゃんを教団とは関係のない人に一時かくまってもらいます。彩乃ちゃんをあずかった人たちを巡るひと夏の物語、一人称(彩乃ちゃんではなくそれぞれの話の主人公の)で語られた3話が収まっています。
「第一話 夜散歩」彩乃ちゃんを預かったのは一人暮らしの独身女性。早寝早起き等いつも立派な生活態度でしつけられてきたであろう彩乃ちゃんが、手でトマトを食べたり、夜更かししたりという開放感にきっと目を丸くして楽しんでいるだろう情景が目に浮かび、微笑ましいです。独身女性の心の機微が、よく描かれていると思います。
「第二話 石階段」舞台は三重県伊勢市。橋本さんのふるさとかな?彩乃ちゃんは里山保全を目的としたNPOの代表をしている人に預けられています。この話の主人公は夏休みの課題でこのNPOにボランティアにやってくる生真面目そうな男子高校生です。
「第三話 夏花火」東京から隣県の田舎へ引っ越したばかりの家族のところで彩乃ちゃんを預かるのですが、この家には綾乃ちゃんと同じ小学5年生の娘・佳奈がいて、第三話の主人公です。佳奈の気持ちの動き、すごくよくわかります。もっとも私の場合は中学生になってからでしたが、10代の始めのころって家族に対して、自分の体つきに関してこんな気持ちになるよね・・・って。まるで女性作家の手になる小説家と思うほど、第一話も第三話も主人公の女の子たちの気持ちが、心の襞にそって描かれていたと思います。共感しやすかったです。

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 彩乃ちゃんには何が見えているのでしょう?この3人に対して彩乃ちゃんはほんの小さなことを言ったり、したりするだけなのですが、みんなの人生が好転していくのです。たしかに運命とか人生とかはささいなきっかけで変わっていくものなのかもしれません。おとなしくて真面目で礼儀正しい彩乃ちゃんは、実にさりげなくそのひとを良いほうへと導いてくれます。
 佳奈が彩乃ちゃんに投げかけるように、彩乃ちゃん自身の幸せはどうなのか?という疑問はありますが、彩乃ちゃんはその生き方を淡々と受け入れています。まだ5年生なのに!ぜひ続編も書いてほしいです。

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