大沢たかお「ファントム」初日 その1
一昨年、宝塚花組の公演を観てとっても感動したアーサー・コピット&モーリー・イェストン版の「オペラ座の怪人」たる「ファントム」。これを宝塚以外の日本のカンパニーで初めて演じると聞いた時から今日、1月13日、梅田芸術劇場へ観にいくのを楽しみにしていました。正直言って、主演の方は名前しか知らない状況に近く、ほかの出演者の方はほとんど知らないといってよい方ばかり。それこそ作品の魅力だけで観にいったのですが・・・。
宝塚版とは訳詞も違えば、当たり前だけど舞台装置も演出も違うので、ちょっとびっくりしました。幕が上がる前から客席に出演者らしき、アンティークな扮装の人々が歩いていて1階席でなかったことがさびしい気がしました。
宝塚版では「潤色」されていたようなので、てっきり省略された場面があるんだと思っていたのですが、むしろ宝塚版のほうがエピソードがたくさんだったような気がします。
![]() |
![]() |
Phantom Vocal Selections 著者:Maury Yeston |
↑ アメリカ版の楽譜です。6曲しか入っていませんが・・・。
(すみません、以下はネタバレでも、批判でも、気にしない方だけ読んでください。)
第1の感想は私も娘も宝塚版のほうが良かった・・・ということです。訳詞(曲への歌詞付け)も宝塚版のほうがこなれている感じでした。字余り気味な翻訳が多かったです。
舞台装置も宝塚の方が、豪華できらびやかなのは、劇団の性格上、またロングランの期間を比較しても、当然ですが、今回のものはキャストが少なくて(21人)オペラ座やコンクール場面での華やかさに欠けるのがいかにもさびしい感じです。女性のドレスの色調も、クリスティーヌの白を除けば、くすんだ色目がベースでしたし。もちろん宝塚とは異なり男性はダークカラーしか使いませんしね。「映像出演」の姿月あさとさんはほとんど影絵のようなもの。歌はさすがにお上手で、姿月さん、ぜひ実体で登場して舞台を引き締めてほしかったと思わずにはおられませんでした。
大沢たかおさんは映画やドラマで大人気の役者さんらしいのですが、なぜ彼を主役に据えて、歌芝居をしなければならなかったのか・・・すごくギモンでした。予備知識のない私はかなり歌える方だからミュージカルに主演なさるのだと思っていました。決して下手ではないと思います。普通に楽しく歌って踊るミュージカルなら、OKだったかもしれません。で・も・・・・この曲かなり音域が広くないと難しいのではないでしょうか?高音を出すのが難しそうでしたし、音程も危うい(このミュージカルの曲歌いこなすの難しそうだし)ように思えました。もっと腹筋を使って力強く伸びやかに(何拍か伸ばすときは、明らかに音符の最後までは声が出ていない)歌ってほしかったと思います。ただ、演技の点ではさすがに人気のある俳優さんだけあって、無理なく怒りや悲しみが表現されていたようにも思えます。
徳永えりさんはお若い方で、可憐なクリスティーヌでしたが、やはり歌に関しては鍛えられていないと思いました。カルロッタの言うように、かわいいけど弱い声。最初客席から登場するので、歌いづらいのかな?とも思いましたが、「メロディ・メロディ・・・」の歌声が、コンテストの場で歌うときさえ、なんだか小刻みに震えていました。ちょうど、あがり性の人が人前で話さなければならない時に声が少し震えるのと同じような感じ。もしこれが演技ならスゴイんですが。徳永さんも歌が下手と言うようなことはまったくないんだと思います。普通に歌っていれば上手な部類だと思います。高音も高音ばかり続く旋律のときは、美しく響いていました。でも、何音か高い音にポンと飛ぶときは若干、音が下がったりかすれたりします。伸ばす音をそのまま支えることが出来ないのは大沢さんと同じ。
そんな主役のお二人なので、レッスンシーンはちょっと聴いてて、ひいてしまう感じ。教える方も、オペラの指導が出来る歌声じゃないし。カルロッタの方がうまいよね。
どうして歌や音楽の専門教育を受けた人をキャスティングしないんでしょうか?スター公演とも思えないのに・・・。人気のある俳優さんたちはスケジュールもいっぱいだとは思いますし、プロダクション側の都合もあるでしょうが、もう少し歌の修行をしてから開幕できるようにしてもらわないと、あるいは現在の歌唱力でも大丈夫な演目にしてもらわないと、なけなしの収入から大枚払って観にいった客に失礼でしょっ!
あと、大沢さんの仮面の下がまったく普通のお顔だったのが、いかがなものかと。
ルカス・ペルマンさんは、本物の王子様のようなビジュアルも、専門的に鍛え上げられた歌も申し分ないと思いました。日本語もなまりがあるとはいえ、お上手でした。ただ、あんなに歌がお上手なのに、ソロ(デュエットかな?)は一曲だけで、とても残念でした。ルカスさんを観ることができたのはうれしかったのですが、この役のためにわざわざオーストリアからルカスさんを招聘する意味は何辺にあるのかギモンです。 パク・トンハさんとWキャストで観客を集めるため?・・・、だったらもっとたくさん歌ってもらえる役でなくては・・・。ここをもう少し容貌は落ちても、日本人の俳優を使えば、あと500円から1000円ぐらいチケット代を下げることが出来たのでは?と思わずにはおれませんでした。
最初オーケストラピットがないので、音楽(伴奏)は録音かと思っていたのですが、途中舞台の上にモニターがあって指揮者が映っているのが見えました。(遠くのサイドからだったのではっきりではないのですが・・)。カーテンコールで楽隊の方々が出てきて、やっと生演奏だって言うことがわかった感じです。
以下明日に続く
![]() |
ファントム 花組(DVD) |
↑私が絶賛する春野寿美礼さんの「ファントム」DVDです
↓友達は宙組バージョンを絶賛していました。
![]() |
ファントム 宙組(DVD) |
| 固定リンク
「演劇・ミュージカル」カテゴリの記事
- 記事を更新しないと!(2020.08.27)
- ライムライト(2019.05.13)
- キャラメルボックス「スロウハイツの神様」(2019.05.02)
- 「偽義経冥界歌」(2019.03.31)
- 「イーハトーボの劇列車」(2019.03.18)
コメント