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2007年3月 2日 (金)

「それでもぼくはやってない」

「それでもぼくはやってない」
 キャッチコピーを見て感じた以上の社会派映画で、見ごたえたっぷりでした。どんなリーガルサスペンスより息詰まる思いで観ました。最後が大団円というわけにはいかなかったのが、ハッピーエンド好きの私には少し辛かったのですが、主人公の達観したようなモノローグに救われ、またさらに考え込まされました。テーマは重たいのですが、ちゃんと映画というエンタテインメントとして楽しめるようにも作られており、長さを感じさせません。

 ストーリーはもう皆さんご存知でしょうが、一言で言うと痴漢冤罪の話です。満員電車を降りたとたんに、背広の袖を捉まれて・・・。恐ろしい話でした。無実の人間がある日突然告発され(私人による逮捕)ただけで、もう犯人扱い。証人らしき人の話もろくに聞かず、警察へ。いくら否認しても聞いてもらえず、取調べ調書は警官の都合の良いように作文されてしまいます。(この映画を見た人は特に誤認逮捕の場合、安易に調書にサインをしてはいけないと心に刻んだことでしょう。正直者ほど、警察が不正義を行うとは思わないから、つい言うとおりにしてしまいそうですが・・・)留置場(拘置所?)や取調べ室での処遇の非人間的なことといったら、1分でも早くココを後にしたいと思えば、微罪なら認めて出してもらおう・・・と思ってしまうのも当然な感じです。日本の留置場・拘置所・刑務所などは欧米に比べ100年遅れているといわれて久しいですが、誇張ではなくて本当にこの映画の通りなのでしょうか?ひどいですね。

 痴漢冤罪は社会問題化しているとどこかに書いてあった気がしますが、冤罪を素人が晴らすのはとても難しいということも怖いことです。ついこの前の1月にも、婦女暴行で有罪判決を受けた富山県の男性が服役して仮出所後に、真犯人が見つかったという報道がされていましたね。先週は鹿児島で選挙違反に問われた12人の被告の全員無罪判決もありましたが、痴漢に限らず、無罪の証拠を拘束された側の被疑者が集めるのは困難でしょうし、検察側に都合の悪い証拠は隠されてしまう、裁判はお金がかかる・・・となると、無実であっても途中であきらめている人が結構いるのかもしれない・・・。映画のように良い友人がいるとは限らないし、そもそも友人に相談しにくいタチのもの。良い弁護士(瀬戸朝香さん、役所広司さんカッコよかったですね♡) を見つけられない人もいるでしょう。何より自分の神経が耐えられない気がします。

 痴漢冤罪に限らず、冤罪がいつ、わが身や家族に降りかかってくるかもしれないと思うと、周防監督がリアルに描き出した日本の裁判制度の抱える現状は、ホントに恐ろしいハナシですよね。強権的な警官や検察官は、人道的な判決をする裁判官が上司ににらまれ左遷される(当然上級裁判所には任官できない)となれば、裁判所が必ずしも正義の府ではないということになってしまいます。何も疚しいことはないからと高をくくってもいられないということですよねぇ・・・。無実の罪を着せられた期間が長いほど人生の狂いも大きいし、その時間は取り返しがつかないではないか・・・と、冤罪への憤りを感じるとともに、被害者の身になってみても、真犯人を取り逃がしていたなんて悔しいではありませんか!もちろん犯罪そのものを許すわけにはいかないし、罪を犯した人は裁かれなければなりません。でも冤罪が起こるということは、逆に言えば犯罪者を取り逃がしているということ。被告・原告どちらの立場に立っても許しがたいことです。
 この映画の場合にしても、中学生が勇気を振り絞って告発したのに、その人が真犯人じゃないとわかったら?すぐにそれがわかっていれば、お互い傷つくことも少なくて済むのに、最初にちゃんと捜査しておいてくれればいいものを、全然関係のない人に迷惑をかけた挙句、真犯人はどこかでのうのうとしているなんて2度3度と被害に遭ったようなダメージを受けてしまうと思います。余計に耐えられない・・・。
 自分が裁判員になった場合はどうでしょう・・・。映画を観ている私たちは主人公の金子徹平(加瀬亮)が犯人ではないことを知っています。でも、それを知らないであの可憐な女子中学生の涙の陳述を聞いたら、どうしたってほだされずにはおれない。真実をどこまで追及できるのか心もとない気がしました。
「十人の真犯人を逃すとも一人の無辜を罰するなかれ」・・・映画の冒頭にテーマが字幕で語られています。無辜(むこ)=罪がないこと 
このコトバ、法格言だそうですが、出典は何処なのでしょう?私は学生時代に「文学」の課題で読んだ土屋隆夫の推理小説(『判事よ自らを裁け』だったかな?)のなかの弁護士のセリフとして初めて知ったような気がします。日本の裁判は有罪率99.9%だそうですが、他国の裁判では有罪率はどうなんでしょう?

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