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2007年3月 4日 (日)

『タカラジェンヌの太平洋戦争』玉岡かおる著

 2004年7月発行と奥付にあるので、おそらく宝塚歌劇団の創立90周年に合わせた企画として出版されたのでしょう。でも、私が買ったのはついこの前、発行から2年半経っているにもかかわらず、初版第1刷でした。ファンならこんな資料も読みましょうよ。『タカラジェンヌの太平洋戦争』玉岡かおる著 新潮新書。母子2代のタカラヅカファンだという著者が、戦前の「歌劇」「宝塚歌劇脚本集」「宝塚年鑑」等の資料や、当時の団員・生徒・ファンなどへの丹念な取材を基に、「タカラヅカと太平洋戦争、夢の世界と暗い現実」(本書プロローグより)をルポルタージュし、文化史として考察した本です。新書、という地味なレーベルでの出版ですが、とても読みやすく興味深く、一気に読みました。

 

タカラジェンヌの太平洋戦争 Book タカラジェンヌの太平洋戦争

著者:玉岡 かおる
販売元:新潮社
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 この本のプロローグ、2004年の新春公演(花組)での、お母様もたいへんなファンだったという春日野八千代の登場から、90年の歴史に思いを馳せた著者の感慨に私も引き寄せられてしまいました。宝塚歌劇の歴史は、軍による大劇場の接収や戦地への慰問公演での苦労(広島の原爆の犠牲になった人も)などは、文字でも映像(ドラマとか)でも垣間見ますが、戦前戦中の宝塚の様子をこんなに詳しくまとめたものを読むのは初めてです。

 第1章は「小林一三の夢」と題され、宝塚少女歌劇発足当時の事情・様子がまとめられています。ちょっとトリビア的知識もあります。第2章からがこの本の本編。タカラヅカと太平洋戦争のかかわりを、時局に否応なく巻き込まれていくタカラヅカとタカラジェンヌのありようをインタビューと資料で綴っています。

 タカラヅカで多くの国策劇が上演されていたり、団員が「国防婦人会」の会員になっていたことは初めて知りました。戦意高揚のための大政翼賛にタカラヅカまで関わらされていたのかと驚きつつ、やはり恐ろしい時代だったのだと思わずにはおれませんでした。この本では、あえてそういった国策劇が戦争犯罪に当らないのだろうかという考察がなされています。ファン的な解釈ではあるものの、こういった見方は新鮮でした。

 戦前はものがなくて、バレエシューズやブラジャーなども手作りだったそうですが、物資の不足はもちろん戦後の再開後にも続きます。ラインダンスのときにタイツも無く素足だったとか、付けまつげも手作りしたとか・・・。ところでこの本の155Pにラインダンスのときに下着が見えないように「ダンスキャル」 (オーバーパンツかな?)というものを穿くことを紹介するくだりに、その素材について「ベンベルグという名称の化繊」と書かれています。「ベンベルグ」は旭化成の登録商標ですから、生地の一般名称「キュプラ」と書かないといけません。また、ベンベルグ(キュプラ)は、レーヨン・テンセルなどと同じく天然原料由来の繊維であって、石油系化学合成物質由来の化学繊維ではありませんから、記述自体が間違っています。せっかく労作なのにこんな素人でもわかる勘違いが混ざってしまったらもったいないと思いました。

 物の不足以外にも食料・医薬品の不足による団員の病気というかなしみもありましたが、第7章に描かれる戦後の復活は感動的です。 

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受信: 2007年3月 6日 (火) 20時34分

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